万象・玉扇を自宅で育てる。窓際やLED、いつもの置き場所を少し違う角度から見てみる

万象・玉扇を自宅で育てる。窓際やLED、いつもの置き場所を少し違う角度から見てみる

万象や玉扇を自宅で育てる環境は、人によってかなり違います。

窓際で自然光を使う方もいれば、植物用LEDを付けた棚で育てる方もいます。日中は窓からの光が入り、足りない時間をLEDで補っているような環境もあります。

今回、こうした置き場所について考えながら、自生地周辺の一年の気候や、ハウスでの管理、Instagramなどで見かける栽培棚を重ねて見てみました。

すると、同じ「室内で育てる」でも、光の入り方だけでなく、夜の温度、風、鉢の乾き方、根が置かれている環境までかなり違うことが見えてきます。

そのあたりを、少しずつ見ていきます。

愛好家の栽培棚、ライト以外にも意外と情報がある

Instagramなどで、きれいに作られた万象や玉扇を見ることがあります。
植物そのものや、使っているLEDが気になることもありますが、棚全体まで見てみると、ほかにもいろいろ写っています。

窓からどれくらい離れているのか。LEDなら、株との距離はどれくらいか。
棚にファンは付いているか。鉢は深そうか、浅そうか。
株同士は詰めて置かれているか、少し間隔があるか。
温湿度計らしきものが置かれていることもあります。

写真だけでその人の育て方を全部知ることはできません。

それでも、ライトの機種だけではなく棚全体を眺めてみると、光の当たり方、空気の動き、鉢や株の置き方など、参考にできそうな材料はずいぶん増えます。

窓際で育てている方なら、窓の方角や遮光の仕方も見えてきます。
こういうところまで見始めると、人の栽培棚を見る楽しみも少し増えてきます。

自生地の一年を見てみると、思ったより気温が動く

もう一つ気になったのが、そもそも万象や玉扇はどんな環境で生きている植物なのか、ということでした。

万象 Haworthia truncata var. maughanii は、南アフリカ・西ケープ州のLittle Karooの中でも、より乾燥した地域に分布しています。

SANBIに収録されている資料では、万象の自生域は年間降水量がおよそ125〜250mm。雨は主に秋にあり、夏は非常に暑く、冬はかなり寒くなる地域とされています。

太い収縮根を持ち、暑く乾いた時期には株を地面の中へ引き込むことができ、地上には平らな「窓」の部分だけが見えるような姿でも生育します。

玉扇 Haworthia truncata var. truncata もLittle Karooに分布し、葉の大部分を地面近くに置き、先端部分だけが土の上に出る特徴的な姿で生育します。

そして、自生域周辺の街Calitzdorpの長期気象データを並べてみると、面白いのが昼と夜の差です。

【自生地域周辺の一年】

  • 夏(12〜2月)
    日中30〜31℃前後 / 夜15〜16℃前後
  • 秋(3〜5月)
    29℃ / 14℃前後から、22℃ / 9℃前後へ
  • 冬(6〜8月)
    日中19〜20℃前後 / 夜5〜6℃前後
  • 春(9〜11月)
    22℃ / 8℃前後から、27℃ / 12℃前後へ

Calitzdorpでは暑い季節が12月上旬〜3月中旬ごろ、涼しい季節が5月下旬〜9月上旬ごろまで続きます。1月は平均で最高約31℃・最低約16℃、7月は最高約19℃・最低約5℃です。

夏は日中30℃を超えても、平均では夜は15〜16℃前後まで下がる。
冬になると、日中は19〜20℃前後でも、夜は5〜6℃前後まで冷える。

一日の中でも、一年の中でも、思っていた以上に温度が動く場所です。

もちろん、これは自生株が生えている地表すれすれの微気候そのものではなく、周辺地域のマクロな気候を見るための参考値です。

この数字を自宅でそのまま再現するという話でもありません。
ただ、万象や玉扇が、ずっと同じ温度・同じ光の中で成立してきた植物ではないことは見えてきます。

それだけでも、自宅の環境を見る材料が一つ増えます。

窓際は、季節と時間で光も温度も動く

自然光で育てている場合、窓際も一年中同じ場所ではありません。
同じ窓でも、夏と冬では太陽の高さが違います。

午前中によく光が入る場所もあれば、午後になると急に強くなる場所もあります。
窓から少し離れるだけでも、株が受ける光は変わります。
さらに、日射が入る時間には、光だけでなく葉や鉢の周りの温度も変わります。

ハオルチアは、多くの種類が自生地で岩や低木などによって光が和らぐ場所に生育します。栽培上も、強い直射光では日焼けを起こすことがあり、特に暑い時期には遮光して育てられることがあります。万象・玉扇のような厚葉種は比較的強い光に耐える場合もありますが、光への慣れ方や温度も関係します。

例えば西向きの窓では、季節によって午後の光と室温上昇が重なることがあります。

一方、別の季節には同じ場所でも光の入り方が変わります。
レースカーテンを使う人もいれば、季節によって少し窓から離す人もいる。

「窓際」という一言の中にも、実際にはかなり違う条件があります。

LEDの棚も、ライト以外の条件がかなり違う

LEDで育てている棚も同じです。
ライトそのものは同じ製品でも、株との距離が違えば受ける光は変わります。
点灯時間も人それぞれです。棚の上段と下段で条件が違うこともあります。

そして、LEDのある棚にはファンが付いていたり、温湿度計が置かれていたりします。

細かく見れば、植物が実際に受け取る光の量を見るPPFDのような指標もありますが、今回の記事ではそこまで掘り下げません。

「ライトが何ワットか」以外にも、棚の中には条件がいくつもあります。
窓からの自然光とLEDを併用している方もいます。季節によって使い方を変えている例もあります。

同じ「室内栽培」でも、棚ごとに環境はかなり違います。

ハウスでは、光・温度・風・鉢まわりを一緒に動かしている

万象や玉扇を作っているハウスを見ていると、調整しているのは光だけではありません。

寒冷紗で日射を弱める。窓や側面を開けて空気を動かす。
換気扇を使って熱を逃がす。寒い時期には加温する。
水やりや鉢、用土によって、根の周りの水分も変わります。

設備の規模はさまざまですが、もう少し大きく見ると、

  • 光
  • 気温
  • 湿度
  • 空気の動き
  • 水分
  • 鉢や根のまわりの温度

といった、植物の周囲の環境をいくつも動かしています。

この中には、自宅でも比較的触りやすいものがあります。

光なら、窓際の位置や遮光、LED。
風なら、小さなファン。
水分なら、鉢や用土、水やり。

少し扱いが違うのが温度です。
生活空間では、植物のためだけに室温を大きく上下させにくい場合もあります。

そこで園芸では、部屋全体の気温とは別に、植物の周囲や、根が置かれている部分の温度を考えることがあります。

根が過ごす部分の温度は「根域温度」と呼ばれます。
家庭園芸でも、育苗用のヒートマットなどで鉢周辺だけを加温する方法をとる人もいるようです。

万象・玉扇で何℃にすればよい、という話ではありません。
ただ、「室温」と「鉢や根が実際に置かれている温度」は必ずしも同じではない、という見方があります。

湿度も似ています。部屋全体の湿度だけではなく、棚の中で空気がどの程度動いているか、水やり後に鉢がどのくらいで乾いていくかまで含めると、植物が置かれている環境はもう少し細かく見えてきます。

ハウスをそのまま自宅に再現するというより、
「ハウスでは、何を動かしているんだろう」と眺めてみる。

すると、自宅でもすでに調整しているものや、まだ工夫できそうなところが見えてくることがあります。

ハウスで見る「昼と夜」の話

提携趣味家のCactusミロンさんに伺った際には、自身の温室について、

  • 昼30℃前後・夜28℃前後のように昼夜差が小さい夏場は、万象・玉扇の動きがかなり鈍い
  • 9月末ごろ、夜温が22〜23℃ほどまで下がって昼夜差が出てくると、再び株が動き始める

という経験を話されていました。

これは氏のハウスでの観察なので、その温度をそのまま室内へ持ってくる話ではありません。

でも、ハウスで株を見ている人が「最高気温」だけではなく、「夜にどこまで下がったか」まで見ているのは興味深いところです。

自生地域の気候データと並べてみても、昼と夜の動きというのは少し気になる要素になります。

光の外側にも、置き場所の違いはある

ここまで光の話を中心に見てきましたが、同じ場所をもう少し広く眺めると、ほかにも違いがあります。

例えば水やりをした翌日。
風が通る棚と、空気があまり動かない棚では、鉢の乾き方が違います。

同じ部屋でも、窓際と部屋の中央では夜間の温度が違うことがあります。
棚の上段と下段で温度差が出ることもあります。
鉢や用土が変われば、水分の残り方も変わります。

そして根は、その鉢の中で過ごしています。

葉の上にどれだけ光が当たっているかだけではなく、鉢が置かれている場所や、そこで水がどう乾いていくかまで含めると、「置き場所」という言葉が少し広く見えてきます。

数字にしてみると、棚の見え方が変わることもある

室内で育てている方の棚を見ると、小さな温湿度計を置いていることがあります。

同じ株を定期的に写真に残している方もいます。

大げさな記録でなくても、

「夏の午後、この棚って何℃くらいになるんだろう」

「夜は意外と下がっているのかな」

「この鉢、水やりから何日くらいで軽くなるんだろう」

と一度数字にしてみると、いつも見ている場所の印象が変わることがあります。

万象や玉扇は動きがゆっくりなので、数日では分からなかった変化が、1か月前の写真と比べると意外にはっきり見えることもあります。

こういう小さな発見が積み重なってくると、人の棚を見るときにも、自分の棚を見るときにも、拾える情報が少しずつ増えてきます。

置き場所は、育て方の中の一つ

ここまで置き場所や光、温度、風の話をしてきました。

一方で、万象・玉扇の育ち方には、ほかにもいろいろな要素があります。

水やりのタイミング。植え替える時期。鉢や用土。植え替えのときに根をどう整理するか。
肥料の使い方。そして、株そのものの状態。

実際にCactusミロンさんの栽培の話を聞いていても、根の扱いや植え替え時期だけでかなり細かな話があります。そのあたりは、それだけで一つの記事になるくらい奥行きがあります。

今回扱った「置き場所」や「育てる環境」は、その中の一つです。

この先、水やりや植え替え、根の処理まで一つずつ見ていくと、「万象・玉扇を育てる」ということ自体がかなり奥深い趣味であることが見えてきます。

いつもの棚に、見るところが少し増える

今回いろいろ並べてみると、窓際、LED、自然光+LED、季節による移動など、自宅での育て方はかなりさまざまでした。

その一方で、自生地の一年や、ハウスでの管理、愛好家の栽培棚を見ていると、

光だけでなく、
夜の温度、
風、
鉢の乾き方、
根が置かれている環境まで、

株の周りにはいろいろな要素があります。

ライトの種類だけではなく、

「この棚では、光や温度や水がどう動いているんだろう」

と見始めると、いつもの置き場所から拾える情報が少し増えます。

そのあたりまで気になり始めると、万象・玉扇の栽培はなかなか奥深いなとしみじみ感じるものです。

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